アラン諸島 石積みの塀

旅行

おはようございます

le ventです

ダブリンを旅している時 誘われるままにアラン諸島に行きました アイルランドという国でさえ精々地図で知ってる程度 ましてやアラン諸島など現地で知った地名です 今でも渡った島の名前は学んでいません 当時はスマホはなく携帯電話だったこともあって 行き当たりばったりの旅は現地の友人の情報に左右されるという旅でした 時が経ってなんというもったいない旅をしたのだろうかといまだに後悔しています 

夏の間だけ運航するという連絡船は 白く美しい姿で群青色の海面に白波を立てて島に向かいました そのスピードは風の強さに対抗するかのようで底しれぬ深さであろう海面を見ながら 好きな海なのに怖さが先立つ性格 椅子にしがみついていました 前方に島影が見え 振り返ればアイルランドの台地の影も見えているのに ただただ海と空でできた球体の中にいるかのような不思議な感覚に陥り 島の船着き場について初めて現実に戻ったような気がしました 

島は船着き場近辺に人が固まっているだけでそこを除けば驚くほど人気の少ない 台地は傾斜はあっても小山さえなく したがって木々さえもない荒涼としたところでした その印象はお天気が良かったことに救われたかもしれません 船着き場の近くに小さな馬車が数台止まっているのが観光地らしく そこから少々見上げる方向に有名な遺跡があるのです

遺跡までは行けども行けども途切れることのない石積みの石垣が誘導し 木立のない道は見晴らしがよく振り返ると遠く石垣で島は網目模様に区切られていました 風化した石垣のそれぞれの石は一つとして人工的に加工したものはなく 数えきれないほどの石すべてが 人の手で砕かれ一つ一つ積み上げられたものです 石垣に託した島の方々の生き様と様々な歴史に対して ただ呆然とするだけでした  

島に広がる網目模様 その中はそこかしこに作物の緑で埋まり ポツンポツンンと佇む白い壁の住居 まるで絵のような静かな美しさでした 風と波の音と星空と 石垣で守り続ける農地と漁業 歴史の中で出来上がった美しさは観光客には別世界です 石積みの石の間から背を伸ばし強い風に揺れながら咲いている小さな花々の可憐さ 石の島のプリンセスに思えました

最近テレビでアラン諸島をドキュメントした番組に出会います 島の高齢の男性が石積みの作業のことに「月までの長さ程積み上げた」という言葉で表現している画面に出会い その言葉に偽りはないな と思った程です 遮るもののない岩盤の台地の島 海藻を利用して土にしたという過酷な土地 強い風から大事な土を守ってきたという石積み 人の手で砕きながら積み上げたという気の遠くなるような作業 気づいたら島全体を覆うかのような網目模様になっていたのです 

地の果てで強く生きてきた人々 訪れた当時でも冬期には島の住民さえも本土に渡り 島に残る人の数も限られるという過酷な環境 岩の大地 言葉にならない何かがこの島にあるのかもしれません 荒削りの何もない島 それでも惹き付けられる島 命あればもう一度行きたい島です

 

 

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