老い の形 決めて・・・!

地平線の夕日

おはようございます

le vent です

近所の老婦人から珍しく電話が来ました  

電話の声は明るく少し甲高く 澄んだいつもと同じでした 言葉がスムーズに出ないこともありましたが 特に気にかかるようなことは無くいつもと変わりません 電話は 意見を聞きたいので是非早急に尋ねてほしいということでした

この方は生涯独身で過ごされ 90歳半ばでもご自分の意見や姿勢を崩さない背筋の伸びた方です 一人暮らしが一番よ と力を込こめてあなたもそうでしょう? と半ば強制的な催促をされたこともあります 数年前まで近所の子供たちに「おばあちゃん」と呼ばれると「○○さんと呼んでね 私はあなたのおばあちゃんでは無いのだから」と 子供にもその母親にも諭していました 子供は見たままの姿を判断するものです 

先だってゴミを捨てに勝手口を出たところ 遠くから小学生の女の子が走って来て何も言わずそのゴミ袋をさっとゴミ置き場に運んでくれたというのです 子供の行為に感謝しながらも腑に落ちないような口ぶりでした 婦人の姿は歳相応と言えます 最近は何かに捉まらなければ歩くのも危なっかしく見えます ゴミに限らず自分でできることは 無理だと思えるまで自分でするという考えで ご近所それぞれ手助けを申しでるのですが 人に頼んでその楽さを知ってしまたら もうもとに戻れないのでと丁寧にお断りがあります 

そういう姿勢の方には 子供の親切な行為は「私ってそのようにおばあさんに見える? 他人はもう一人暮らしは無理とみているのか あなたの意見を聞きたい」という緊急の事件だったようです なぜ緊急を要するのだろうと思いましたが 

慌てて尋ねると部屋に入るなり椅子をすすめるでもなく いきなり 昔この辺りはね・・・から話が始まりました 本題に関連しているのだろうと聞いていたのですが 宗教を始め 教育 環境 文化 政治 社会などご自分の史実と現在 豊富な話題 批判や意見には相応の距離を置いた生き生きとした話しぶり 緊急の件には全く触れる様子はありません 

途中「私は中々話が終わらないから いつでもあなたの都合で帰ってね」と 何回も言われるのです 私の意見を聞くという本題はどこかに消えていました いきなり帰るわけにもいかず覚悟を決めて暫く聞くことにしたのです 2時間経っても終わる気配はなく 言葉通り断って帰ろうとするとその理由を聞かれ引き止められ また黙って聞くことの繰り返し 壁の時計を見ることしきりです さすがに3時間過ぎると強引に帰りました   

「あなたはすぐ飛んできてくれたけど他の方は後で伺います と言って来てくれないのよ」 

老後を一人で暮らすというのは 確かに人と話す機会は少ないのです 最近はコロナの影響もあり殊更です その上「私はマスクはしない したことない」とマスクを拒否する姿勢を貫いて 悪意はなくても戸惑います 最近は物忘ればかりと自嘲されるのですが とてもとてもその年齢とは思えない 知識や表現には目を見張ります  

 ゴミを捨ててくれた優しい女の子との出会いは 今後のライフスタイルを考えるきっかけだったのでしょう ただ 他人の見た目で他人に決めてもらうという考え 余裕なのか老化のせいなのか たまに不安めいた言葉が出るにしても 恐らくまだ一人で過ごしたい気持ちが強いのではないのかな その確認だったかな と思えなくもありません 

公的支援を断って一人で生きることを実行し誇り高く強く過ごしている方を 皆で見守ることはできてもライフスタイルの判断と助言を任されるのは荷が重すぎます 頭脳と体力の老化の進行程度の違いは 一つの老いの形 なのでしょうか

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