おはようございます
le vent です
春がはっきりした頃になると 胸に小さなフリージャのコサージュを付けて 面映いような誇らしげな表情の小学校の卒業式帰りの子供たちに出会うのです 今年は新型コロナウイルスの感染の影響もあります あの顔に出会えるのでしょうか
最近卒業式そのものに全くご縁がありませんので時代錯誤でしょうが 遥か昔の卒業式の式次第の中に必ず思い出す場面があります その場にタイムスリップしている気持にさえなります
卒業生全員で歌った「仰げば尊し」の斉唱です
式場である講堂のグランドピアノで 音楽の先生が静かに奏でだす数フレーズの響き 静かに或は元気に歌い出しても 次第にそれまでの複雑な気持が現実になり ステージ正面に飾られた「ご卒業おめでとう」の花飾りのついた横断幕 前後左右斜めに並ぶ友達 ステージに飾れた大きな花瓶の花 窓際に並ぶ先生たち 講堂の天井 緩やかなカーブを描いたワインカラーのステージの幕 どれもこれも 歌っているうちに涙でにじみ 男の子は涙を隠し 女の子は手放しで涙ぽろぽろ 音に酔っていたのかもしれません が それだけでは決してなかったと思います
好きな先生ばかりではなかったこと 仲良しの友達だけではなかったこと 楽しい行事 嫌な行事 黒板の前に座らされたこと ?の罰に廊下の拭き掃除を往復数十回もさせられたこと いろいろ思い浮かびました 音楽 メロディーの力はまさにアート 神 かもしれません
歌詞の中に「わが師の恩」という言葉が入っていますが 送り出す先生方はどのような気持でこの言葉を聴いていたのかなと今思うのです 歌いながら多くの先生の顔が浮かびました あの頃にも虐めはありました が それに気づき反省する自浄作用は 仲間同士にも先生と子供の間にも今より強くあったかもしれません
最近の卒業式では「仰げば尊し」の斉唱は 歌うどころか 飛んでも無いことのように聞いていますが 送り出す方も出ていく方もそれぞれに別れていく仲間同士にも 相手への思いやりと感謝を心に蘇らす力がメロディーにあるように感じています 時間を共有した子供たちが卒業式で揃って歌った「仰げば尊し」 同窓生は誰も忘れてはいない気がします
心洗われる美しいメロディーと難しかった文語体の歌詞 この季節になると年を経た自分を思いながら口ずさみます そしてあの頃の何かを思い出すのです