おはようございます
le vent です
夕闇というか薄青い光が周りを包んだ時刻に オレンジ色の弱い灯りをともした提灯が揺れながら畦道を通っていく まるで映画の一シーンのような光景が昔の田舎にありました 行先は勿論お墓です
各家それぞれにいくつかの提灯を持ち あちこちから墓地に向かっていくのです 長い竿にぼんやりとした灯りの提灯を幾つもぶら下げた列は 初盆を迎えた家ですぐにわかりました 青竹に幾つもの提灯をぶら下げ 竿の前後を男の人が担っていくのです ぶら下がっている提灯の数も種類も多く 提灯の形は縦に長いもの丸いものなど とりどりで灯りの高さも強さも違い 光の列は子供には嬉しく美しく見えました
当時の提灯の光源はろうそくで 歩くたびに炎も揺れ 明るさが強くなったり 時には消えそうに細くなったりでしたが 弱い光でもオレンジ色の光に強弱がありました
国道にせり寄った山の小さな突端のすべてを集落の墓地としていたように記憶しています 松の林でした あちこち松が根を伸ばしたり 傾斜地の狭い所も墓地になっていて足元も悪く 墓石も最近のように大きく立派なものも勿論ありましたが 風化でざらざらの小振りなものが殆どでした 区画も整ってなく 他家のお墓の前や横をとおりぬけて自家のお墓に行くのです 墓石の代りにお神輿のような形の白木の小さな造作物があったり 真新しい造作物の周りにはお葬式の時の名残の 白や銀色の紙の飾りがまだ新しいままで残っていたりしたものです
当時 le vent の祖父の住む地方には土葬が残っていました 土中に弔ったあと 暫く墓石をその上にはおいてはいけないと教わりました 「寝ている仏様の上に墓石を置くと 仏さまが重いでしょう」と教わったのですが 子供ながらに納得していました 白木のお神輿のような造作物は墓石の代りなのかと思いました 墓地のあちこちにある朽ちかけた小さな白木の造作物 もう白木ではなくなっていましたが 朽ち方を見るたびに亡くなったのは何時だったのかな いつになると墓石ができるのかなと思ったものです
夕闇も深くなって人の顔も 灯りが無いと区別できない時刻の頃までお墓は人が集っていました 当時としては多くの村人が寄る数少ない機会でしたが にぎやかさはなく かといって静かでもなく お線香の煙と香りが漂う墓地 子供心にもお盆は特別のことなんだと思わせたものです 墓地の外から見ると お灯明の蝋燭と 提灯の灯りが 今どきのイルミネーションのようだったかもしれません