山小屋 室堂 カニ族

地平線の夕日

おはようございます

le vent です

人生で山小屋に泊まった経験が ただ一度だけあります 北アルプス立山の室堂の山小屋です 学生時代ですから随分前のお話しです 夏 友達が遊びに来ると必ず案内する所が 立山と黒部峡谷でした 立山に登頂するのではなく室堂を散策して帰るのです 雄山の麓辺りに山小屋が見えていました 当時の山小屋は現在の山小屋の前の建物です たまたま立山登頂を希望した友達と一度は登らねばと登頂をチャレンジしました その時にお世話になったのが一度の経験です 

当時の室堂は と言っても現在を知りませんが行くたびに歩道が整備されていたり 道路脇にロープが張られたり それまで勝手に歩き回った場所にも行けなくなっていました そこかしこに規制されていく環境保護の奔りの頃だったと思います 大きな万年雪があって黒い線で模様になった雪の上を滑っていた人の姿もありました 万年雪は珍しく大喜びしたものです

当時のアルピニストたちは 現在のような軽くて丈夫でファッショナブルな服装や装備ではなく 丈夫そうなリュックを背負い しかもそのリュックの上には お鍋やくるくる巻いたゴザらしきものを乗せてあることもありました 後ろから見ると横に長いカニの甲羅のようなリュックから足が二本出ているだけの独特の姿でした 頭は見えず ただ黙々と一人或いは数人で山小屋とは違う方向に一歩一歩 歩いて行く姿をみたのもです 彼らには「カニ族」という呼び名がつけられていたように思います 

室堂の山小屋そのものはよく覚えていませんが 靴箱に靴を収めたあと案内されたのは畳敷きのかなりの大広間で着いたのが早い時刻だったのでしょう 先客は奥の方に数人だけで場所は選び放題でした 荷物を開けてくつろいでいるとだんだん人が増え始め もう無理ねと思っても 次々と増えていきました あんなに広かった部屋は人で溢れ足の踏み場もない満室になり 横になる時は部屋の端から端まで男女の区別無く 畳一枚に二人或いは畳二枚に三人 というように隙間なくくっ付いて寝るありさまでその列が部屋を埋めていました すぐ隣に全く知らない人がくっ付くように寝ている状態でした 

現在なら格好の話題として取り上げられるような有様です 誰も不平も言わず それぞれの節度で山を楽しんでいたのだと思います 山小屋では決して宿泊客を拒否しない ということをその時知ったのです 最近 様々な山小屋の姿をTVで観る機会がありますが どこもプライバシーを確保してあるかのように見受けます 雑魚寝なんてないのでしょうね

カラフルなテントの花が咲くアルピニストのキャンプ場の写真を見ると 当時のカニ族はいったどのような色のテントで過ごしたのだろうと なぜか笑みがこぼれます 澄んだ空気 不規則な形をした白い万年雪 山肌の緑 青空を背に凛としてそびえる雄大な山々 風 などなど 登山は不得手ですが一度でもその快感を経験したことを大事な思い出としています  

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