ショパン 幻想即興曲 

地平線の夕日

おはようございます

le vent です

高校時代に住んでいた街は 低い山がU字型に囲った小さな入り江の奥にありました 外海への出入り口は 両方の岬が向かい会い短い水平線で繋がっていました 大型の定期船も寄港していたのですが 桟橋ができるまで はしけ で上陸するような小さな港でした 

高校は山の緩やかな傾斜地を利用してありました 校門を入るといきなり横にかなり広い校庭の空間があって 校舎は階段状に縦に数棟並び登っていくような配置だったと思います 面白いことにプールも道場も最上段にありました 正面の校舎だけは校庭と並行に横に長くあって 管理棟を兼ね 音楽室 理科室 美術室などの特別教室が入っていました   

秋のある朝 いつもより早い時間に登校すると校門を入るなりピアノの音色が校庭に響いていたのです 今までなかったことでびっくりしました 遮るものの無い広い校庭に響くピアノ 思わず立ち止まってしまったことを覚えています どこから聞こえているのか見回すと 正面 管理棟の端にあった音楽室の窓が空いていました 朝のピアノは暫く続き だんだん噂になり ピアニストの正体が分かったのです 驚くことに同級生でした  

白く乾いたグランドに広がるピアノの響きは非情に印象深く その曲が耳になじむと なんと難しい曲を弾くんだ と冷静になり 同級生の演奏とわかってからはクラスでその気配さえ出さなかった同級生に驚き 身近にピアノを弾ける友がいたことにもっと驚きました 自宅のピアノはアップライトのため 学校のグランドピアノで最終調整をしていると聴きました 「えーっ ピアノがお家に在るの?!!」という驚きがありました

コンクールに出場する腕前の持ち主だったらしく 知る人ぞ知る存在だったのです その人が同じクラスの同級生あること 全くおくびにも出さず机を並べていること 何かにつけすべてが雲の上の人に見えたものです 人口数万の小さな街 地べたに茣蓙を敷いて物を売っていた市場があった頃 ピアノなど思いもしなかった楽器でした

大きな都市で開かれるコンクール あの水平線を超えて定期船で出発していったのでしょうが その時期も期日も コンクールの結果も知らされませんでした 校庭に響いていたピアノは聞こえなくなり 日常に戻り 誰も噂さえもせず 忘れていきました

心に残ったショパン「幻想即興曲」 耳にするたびに複雑な青年期と広くて白い校庭が浮かびます

 

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