ドンエンガス 断崖

地平線の夕日

おはよございます

le vent です

毎日家に閉じこもる事はただでさえ動くことが億劫になっていく老人には そのことに拍車をかけます 

最近昔の旅を思い出しその時々の場所と共に 体力も感性も一緒に蘇ります あそこで走ったな とか 長い階段をよくぞ上ったな というようなつまらないことです 気力と体力を振り絞ってもう一度行きたい場所があります

「DON ENGUS] アイルランド アラン諸島の中の島にある遺跡です 

この島は夏にしか観光はできません 港の近辺にインフォメーションセンターを初めとしたいくつかの施設があるだけです 島は港を背にしてなだらかに上るようにあり 目を遮るものはほぼ皆無です 土地の境界線代わりの石積みの低い壁はゆがんだ碁盤の線のように区分しながら延々と続き 石積みの間の小道を「DON ENGUS」に向かいます 

途中遥か遠くには白くかすんで平坦な島の果てが見渡せ 振り返ると遠くにポツン ポツンと白い壁の人家が点在する なんとも寂しい大人しい静かな島です 石ばかりの島 乾いた島でも 石積みの間から雑草が生え 時には小さな花が風に耐えて咲いており 可憐さに言葉が出なかった思い出があります 

遺跡は石積みの大きな高い壁で囲まれ 門を潜ると大して広くもな半円形の広場が高い壁を背にあって 正面の先は陽ざしに輝く大西洋が広がっていました 広場の端は100mはあるという断崖絶壁なのですが 一切の柵もロープもありません 広場は多分同じフェリーに乗っていたと思われる観光客がばかりです

さすがに立ったままで断崖を覗くものはひとりも無く 恐る恐る腹這いになって断崖の端に進み 人に足を抑えてもらって下を覗くのです 水面はキラキラ輝き 打ち付ける波が白く見えました 其のまま横を見ると断崖が続き その高さに改めて驚くと同時に覗いている場所の並びは 庇のようにせり出ているのです 「今庇の上に腹這いになっているんだ」と気づき より静かにそっと腹這いのまま下がった記憶があります

「DON ENGUS」の魅力はこの断崖そのものです 広場には小柄な女性の警備員が一人 トランシーバーを片手に腰を掛けて観光客を見ているだけです 物々しい警備と警備員で守られ固められた観光と観光地が多い中 自己責任 という言葉に対する意識と行動 その文化 その違いに圧倒された場所です

昔海藻で土を作って畑を耕したという貧しい土地 風に揺れる小さな花 黒い屋根白い壁の箱のような人家 石積みの囲いの中の羊たち この島が強く印象に残っています 遺跡の壁の縁を覆っていたナショナルカラーの緑 芝生の伸びたような植物のその中に座った思い出 人生の終わりにもう一度いけるなら迷うことなくこの島です

タイトルとURLをコピーしました