おはようございます
le vent です
もう随分長いこと虚無僧の姿をみたことがありません 住んでいた地方の静かな町では 時々住宅地でも見かけたりすれ違ったりということもありました 見るからに異様と感じる装束姿に突然出会うと ドキンと胸がなり 足がすくむ程怖いものでした
筒のような大きな籠を頭からすっぽりかぶり 白い衣装の胸正面には袋を下げて 尺八をもっていたように思います ただ静かに歩いていくだけでしたが とにかく怖い思いがしました 一方 顔も出してないのに なぜ前が見えて歩けるのか不思議?と 長いこと思っていたのです 正面切って虚無僧と対峙する勇気はありませんでした 偶然何かの弾みで顔のあたりの籠の編み方に隙間があることを見て 「何だ!そういうことか!」 と 安心したものです 怖いのか好奇心か
能登半島の付け根辺り 富山湾側の山間に名前は忘れてしまったのですが 虚無僧の集まるお寺を見つけ 何度か尋ねたことがあります 海岸線から山の方に折れ狭い道をしばらく走った山際だったと記憶しています 山門の正面は広くてなだらかな石畳で 境内は大きくまっすぐな木が茂り シンとした静けさと薄暗さに包まれていました
本堂のことは記憶にありませんが 確か左の奥の方に講堂のような広い建物が建っていました ある時 そこに白装束の虚無僧が次々と吸い込まれていったのです 何でも全国から集まってくる虚無僧の定例行事と知りました 勿論遠くから見ていたのですが 講堂で何をしているのだろうという好奇心はあり 近くまでそっと忍びよって行った記憶があります
偶然出会った虚無僧の集まり 季節は春だったのか 夏の暑い時だったのかは覚えていません 山門に向かう石畳を 或いは境内の木立の間を 独特の籠の被り物をした白い虚無僧達が ぞろぞろと歩く姿は 怖くもあり不思議な光景でもありました
当時はまだ車の普及率は低く 道路の整備や舗装は限られ道は悪く ガソリンは確か40円前後の価格の頃です ガソリンスタンドに勤務する友達が法人契約のガソリンの価格で給油してくれ 休日には下手な運転ながら二人して田んぼや畑のあぜ道 山間部など所かまわずドライブし 探検気分であちこち出かけました ナビは勿論なく オートマチック車もまだ出始めた頃のことで ハンドルチェンジかフロアチェンジ(とギアチェンジを呼んでいました)の車に乗っていました そのドライブでたまたま出会ったお寺です
近くに人家がある訳でもないのに 山門に向う石畳の両側にはお料理屋さんが数件ありました 名物は「筍料理のフルコース」です お膳にお皿があふれるばかりに並んだ「筍料理のフルコース」は 筍ご飯 お吸い物 お刺身 和え物 天ぷら 含め煮 ぬた 焼いた筍 筍のお漬物 など まだあったかもしれませんが とにかくその種類の多さに驚き 始めて食べる筍料理もあり珍しく美味しいフルコースでした
其のうち友達は結婚し le ventも街を離れ 暫く時間をおいて春に再度訪れたお寺は 何処か雰囲気が違い 門前のお料食理屋さんはすべて店を閉じていました 虚無僧が集まる季節では無かったかもしれませんが 全く人気を感じないお寺になっており 美味しかった筍料理どころか門前の石畳の寂しさばかりを感じ 車を降りることなくUターンしました
あれから数十年経ちました 恐らく途中の道路は綺麗に整備され お寺の佇まいはなお趣深く 門前のお料理やさんは筍の季節には賑わいが戻っているに違いないと思う反面 全く違う場所 違う風景になっているかもしれない という思いも拭いきれません 今更尋ねようにも 場所もお寺の名前も分からないのですから・・・青春の一コマです