お正月 お節 お道具

地平線の夕日

おはようございます

le vent です

今年も またお正月が通りすぎて行きました  毎年 毎年 年末から同じことを繰り返し ただバタバタと時間が流れ 元旦を迎えます  もうこの年齢になると 改まった気分も何もあったものではなく惰性です  店頭に並ぶ新年を迎えるための インテリア雑貨を 好むと好まざるに関係なく 形式的に玄関に吊るし お飾りを形ばかりにしつらえ 普段より少し丁寧に お掃除をします

いつもと同じに時は進み いつものように朝 太陽が上る  初日の出です  「どこが違うのよ」 と 言いたくなります  テレビなどで紹介される 由緒正しい旧家とは違って しきたりも伝統もないのに お屠蘇だお節だと用意します 文化を形として受け入れています お重箱のなかのお料理は 今や年がら年中口にすることができる物ばかりです カレンダーが新しく変わることに対するセレモニーに捉えています

表座敷の襖を外し 二間続きの広いお座敷にコの字に 高足の高低さのある二つの塗りのお膳にお料理が乗って 整然と同らび  正装した家族が祖父を上座にして年齢順に並んで座った 元日の微かな思い出  家長の祖父から 年齢順にお屠蘇をいただいたこと 家族+oneであった最末席のle vent のお膳にも お雑煮をはじめお料理がみんなと同じ器で並び  器どうしがひしめき合って お膳の縁に斜めになって乗っていた たわいもないことを 覚えています

お料理の 一つ一つ覚えてはいませんが どれかの器に 祖父が秋の日溜まりの縁側で 庭の渋柿を一人黙ってくるくると剥き 軒先の竿に吊るして 作っていた干し柿が 必ず載っていました  記憶にある限り 最近のお節のように お重箱に美しく飾り 詰め合わせたお節ではなく お膳の上に 銘々の器にお料理が載っていたのです

光沢のある塗りの器に盛りつけてあるお料理は地味な色合いで その中でもお雑煮腕に器からはみ出して乗っていた干した車海老の鮮やかな赤 かまぼこの白 黄金やきの黄色 干し柿のさびたオレンジ色は アクセントになっていました 当時は練り物の蒲鉾などすべて手作りで お正月にしか食べられない特別のものでした 加工食品は殆どなく あったとしても また田舎では手に入らなかった時代です 蒲鉾や黄金やきの独特の食感とほのかな甘みは 子供の味覚にも強い印象を与えました

小学校の就学時に祖父の家を連れ出され その数年後祖父は無くなりました その後はご多分に漏れず複雑だった家族環境もあり 屋敷も多くの田畑や山もすべて無くなりました 

お正月に使われた高足の塗りのお膳を始め 数人のお手伝いさんが横並びになって次々と洗った塗りの器を布巾で丁寧に拭いて箱にしまっていた姿 運動会やお花見など地域の行事で使われていたお重箱 その中でも祖父専用だった螺鈿のようにキラキラした小振りの数段重ねの塗りのお重箱 携帯用に工夫され対角線状に開く形状でした 幼い子供心にも美しいと思ったものすべてが なくなりました

テレビの「なんでも鑑定団」を見る度にふっと思い出します 幼い頃に使われていたお道具 器 みんな見事に大人の事情で消えてしまいましたが le vent の幼い頃に美しい工芸品のようなものに触れさせてもらったことに感謝しています それらはその後の人生 心を豊かにしてくれるものだったように思います あのまま残っているに越したことはありませんが 大人たちの思惑はいろいろです 無くなってよかったのかもしれません 

物に対する思い出は人の心の醜さは伴わず その美しさだけが残ります 後何度お正月を迎えるのでしょうか 準備が便利に簡単になるだけ 幼い頃の手間暇かけたであろうお正月の様子が より美化されて蘇ります もしかしたら 夢? 現?  

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