花嫁御寮 

地平線の夕日

おはようございます

le vent です

花嫁さんを最もまじかに見たのは いつだったかなあと思う程花嫁さんにご縁がありません 真っ白なウエディングドレスに長いベール よく似あった上に本当に美しい姿です 近くに行くのもはばかれるほどの花嫁の自覚と威厳があって 遠くから見させていただくものです 

結婚式は殆どそのための施設やホテルですが 今ほど整っていなかった頃は 一体どこで執り行われ披露していたのかと思います 花嫁さんと言えば 随分昔は 文金高島田の衣装が一般的だったように思い出します 幼い頃に住んでいた農村では 実家の玄関から仲人さんに手を引かれて 婚家先に向かう花嫁御寮を何度か見た経験があります 

玄関先には近所の女性が大勢寄り集い 白い角隠しと黒地に金糸や銀糸の縫い取りのある見たこともない美しい花嫁衣裳に身を纏った花嫁御寮が しずしずと前後を守られがら進んでいくのです 近所の女性たちは 何かと声をかけ 子供たちはいつものお姉さんとは全く違う姿に何が起こったのだと唖然とし それでも行列の後ろをついって行ったものです 

田舎の家は普通長い縁側があって 部屋と縁側の境は障子で仕切られていました ぴっちりと閉められた障子の向うの様子を知りたくて 縁側によじ登り何とか覗ける破れや隙間はないものかと探したものですが 結婚式です 綺麗に張り替えてありました 本当に作ったような描写ですが映画に出てくるような場面の思い出です  

宴がたけなわになると障子も取り外され 紋付き袴の顔見知りの叔父さん達が嬉しそうに騒いでいるのが見えましたが そこにいるのは親戚らしい女性を覗き 殆ど男性ばかりなのです あの美しい花嫁御寮の姿は奥の方に座って見えなくなっていました 近隣の女性は真新しい割烹着を付け忙しく出入りしているだけで誰も座ってはいなかったように思います 

子供たちにとっては 今日は何だ!という程度の認識で ただいつもと違う村の人達の様子を見て 大人だけの日 なのだと納得していたものです 翌日には昨日の騒ぎはなかったような村の叔父さん達の姿があって 子供たちにはますます不思議な一日だったような気がしました 

カメラも普及していたわけでもなく記念写真はあっても 夫婦の写真と出席者の全体写真がセピア色になって残っている時代のお話です お菓子か何かを頂いたかもしれませんが 全く記憶にありません 

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